こんにちは、霜月です。
土屋大洋先生の書かれた「サイバーセキュリティと国際政治」を読んだので、感想をまとめてみたいと思います!
ご興味ある方は是非どうぞ〜m(o・ω・o)m
※過度なネタバレは避けて、あくまで個人の感想と印象に残った箇所をまとめていきます
どんな本?
こちらの本は、日本を含めた世界のサイバーセキュリティ情勢と各国のインテリジェンス活動について、政治的な視点からまとめられた本です。世界各国での歴史的なサイバーインシデントを振り返りつつ、かの有名なスノーデン事件が何故起きてしまったのか、また、世界に対してどのような影響をもたらしたのか解説されています。
インテリジェンスの最高峰といったらやはり米国ですが、政治的な背景を持って発生したサイバーインシデントを、彼らがどう受け止めてきたのか理解を深めることができました。世界をリードする米国の各インテリジェンス組織が、サイバーセキュリティをどう捉えており、何が脅威で敵はどこにいるのか、保護すべき対象は何なのか、宇宙や海底ケーブルの話にも触れながら解説されています!読後感の満足度が半端なかったです(語彙力)。
私を含め現場のエンジニアからすると、中々に視座が高いと感じる内容だと思いますが、サイバーセキュリティに関わる人、特にインテリジェンス関連の業務をしている人にとっては非常に勉強になる本だと感じました!
因みに、目次はこんな感じです。
第1章:セキュリティとプライバシーのジレンマ
第2章:スノーデン事件のインパクト
第3章:米国のインテリジェンス機関とサイバーセキュリティ
第4章:英国のインテリジェンス機関とサイバーセキュリティ
第5章:グローバル・コモンズと重要インフラの防衛
第6章:サイバーセキュリティと国際政治
第7章:サイバーセキュリティとインテリジェンス
印象に残ったパート
最初から最後まで非常に興味深い内容ばかりでしたが、個人的に特に良かったと感じたパートについてまとめていきます!
エドワード・スノーデンの暴露
本書は全体を通して、スノーデン事件について言及されています。「NSAがプリズムというシステムを使って世界中を監視している」という衝撃的なニュース。暴露された当時は日本でも当然話題となり、不安になった人も多かったはずです。私もニュースを見た当時は「そんな映画みたいなことある!?」と驚きました。そもそも、何故このような監視システムが作られてしまったかというと、9.11事件が発端でした。「テロを防げなかった」という非難はインテリジェンス機関に向けられ、その後、米国内でインテリジェンス活動の予算が増加しました。また、スノーデン事件の2ヶ月後に開催された、セキュリティ界隈では有名なハッカーの祭典「DEF CON」では、NSAや政府職員らが締め出される事態にもなったそうです。
米国はセキュリティ・クリアランス(業務上のNeed to Knowが認められた者だけが、情報にアクセスできる制度)がありますが、9.11後の業務拡大に伴い、セキュリティ・クリアランス取得のためのバックグラウンドチェックを、委託された民間企業が行っていました。スノーデンも民間企業によるバックグラウンドチェックにより、セキュリティ・クリアランスを取得していたそうです。(因みに、日本でも2024年現在、セキュリティ・クリアランス制度導入の話が進んでいますね。)
スノーデン事件については様々な書籍も出ていますし、本人からも日本に向けたメッセージが出ています。改めて振り返ってみようと思いました。
米国のインテリジェンス組織
続いて非常に興味深かったのが、第3章の米国のインテリジェンス組織に関する解説です。面白くて夢中で読んでしまいました!詳しくは是非本書を読んでいただきたいのですが、なんと、米国にはインテリジェンス組織は16もあるようなのです!「米国のインテリジェンス組織」といえば、FBI、NSA、CIAが真っ先に思いつきますが、他にも「国防総省国防情報局(DIA)」「国家偵察局(NRO)」「国家地球空間情報局(NGA)」...などなどがあるそうです。
そして、最も心惹かれたのは、国家情報長官であるジェームズ・クラッパー氏がDCのインテリジェンスサミットで説明した「インテリジェンスを職とする人が身につけるべき7つの倫理」です。それは「使命」「真実」「合法性」「誠実さ」「監督と報告の責務」「優秀さ」「多様性」です。
第4章では英国のインテリジェンス組織についてもまとめられています。
グローバル・コモンズ
グローバル・コモンズとは、「一国がコントロールできないが、すべての国が依拠する領域や区域」のこと。宇宙やサイバースペースが含まれるそうです。しかし、その場合、脅威となるアクターは国家だけではなく、国家以外の組織や個人も含まれてきます。と言うのも、コンピュータも宇宙も、民間企業や個人が参入している分野であり、特にソフトウェア等は民間が開発したものを政府が利用しているからです。更に、民間に従事している人は政府関係者では無いため、マインドが当然異なります。この辺りの話は、NASAやJAXAの事例にも触れられており、印象的でした。
最後に
本書は読み応えのある素晴らしい1冊だと感じました。ITは比較的新しい分野であるからこそ、しっかりと歴史を学ぶことで、より良い将来に繋げることができるんじゃないかと、本書を通じて考えたりしました。
ちょっと脱線かもしれませんが、自分の学生時代を振り返ってみると、数学や物理ばかりに一生懸命で、日本史や世界史、政治や経済にあまり目を向けてきませんでした(汗)社会人となって専門的な仕事をしているとは言え、過去の自分に「もっと勉強しろ!!」と言ってやりたい気持ちによくなります(^_^;)haha
本書を通じて改めてそう思いました(ただの個人の感想です)。
国際政治に興味がある方、インテリジェンスに興味がある方、(というかセキュリティが好きな方)にはピッタリの本だと思います!
是非、気になった方は読んでみてくださいませm(o・ω・o)m